m-trip「満たせ、タイ人の胃袋!おとなの食品加工工場見学!Cho Heng Rice Vermicelli」 - mediator

Blog m-trip「満たせ、タイ人の胃袋!おとなの食品加工工場見学!Cho Heng Rice Vermicelli」

2016年12月01日 (木)

販路開拓・進出
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2016年8月11日。タイのローカル企業を訪問するmediator主催の人気企画m-trip「満たせ、タイ人の胃袋!おとなの食品加工工場見学!」が開催されました。

今回の訪問先は、社と社の2社。前者は、お米でできた麺や米粉の食品メーカー、後者はタイ料理のペーストや調味料を手掛ける食品メーカーです。

タイ人の食生活をしっかりと支えている両社が、いかにして製品を開発し生産し、輸出しているのか。安全安心への取り組みは? 今後の方向性は? 楽しくてためになる、そして参加者全員がタイの食品メーカーの底力を実感した工場見学ツアーの模様をレポートします。

46年前に伝統的な手法から近代的な製法にシフト

クイッティアオと聞いてみなさんは何をイメージしますか? センミー、センレック、センヤーイ? それともパッタイでしょうか。

今回のツアーの最初の訪問先は、日本人にもすっかりお馴染となりつつある米麺のメーカーCho Heng Rice Vermicelli社です。

ERAWANブランドで知られる同社の概要をまずご紹介しましょう。

主な製品は米麺、米粉、もち米粉、ビーフンなど。お米を材料とする製品に特化したメーカーです。生産量は年間30万トン。米粉の工場としては世界一の規模です。

創業は86年前。初代はビーフン工場勤務を経て独立し、バンコク市内でビーフン製造会社を立ち上げました。初代から二代目の時代までは、天日干しの手法でビーフンを生産していたそうです。天気が良ければ外に干し、雨が降れば室内に取り込む。そんな伝統的な生産方法から効率的な生産手法へと大きく舵を切ったのが三代目でした。

海外へ留学し、エンジニアリングの勉強を重ねた三代目は、現代的な技術とマネジメントを持ち込み、生産品もビーフンから米粉や米麺にも広げ、ファミリービジネスを近代的な企業へと生まれ変わらせたのです。

工場をバンコクから現在のナコンパトムに移したのも三代目。米麺の生産には大量の水が欠かせませんが、その点、現在の場所なら川に近く、水を容易に得ることができます。

今回会社をご案内いただいた二代目の娘さんは語ります。

「こちらに越してからはISO9000も取得し、海外への輸出も始めました。世界の市場へと製品を輸出するためには、世界規格に合わせなければなりません。環境や安全に対する考え方や取り組みも、46年前から大きく変わりました」

世界市場に照準を合わせて、ISO9001、ISO14001、ISO22000のほか、HACCPやハラルなどを取得してきたho Heng Rice Vermicelli社の輸出先は、シンガポール、マレーシア、香港、中国、インドネシア、それから日本。さらにはヨーロッパなど世界中におよんでいます。

日本に輸出しているのは米粉やもち米粉などの超製品で、量にして年間1万トン。中堅米菓メーカーの製品や大手流通企業、大手食品メーカーに利用されているといいますから、日本で知らないうちに、私たちもCho Heng Rice Vermicelli社の製品を口にしているかもしれません。

機械は社内で内製化、だからトラブル解決も早い

次はいよいよ工場見学です。白衣、キャップ、長靴スタイルに着替え、万全の体制でツアーメンバーは工場へと向かいます。

工場は「近代的」の一言でした。

タイで初めて熱風で米粉を乾燥させる製造法を導入したのはほかならぬ同社。FA化が徹底された工場の衛生レベルの高さ、効率的なオペレーションはおそらく世界の先端をいくレベルでしょう。

そして、驚くことに、PCで操作可能なコントロール室も生産ラインに並ぶ機械の大半も、そして工場に導入されているエレベーターさえも内製化しているといいます。同社に勤務し、ジャパンマーケットディビジョンの副マネージャーをつとめる秋崎さとるさんが教えてくれました。

「実は敷地内に鉄工所も開設しているんですよ。機械を内製化するために必要な材料を自社内で作るためです。そのため、内部にたくさんのエンジニアを抱えています。自分たちで作っていますから、何かトラブルが起きたときも解決が早いですね。原因を究明しやすいですし、修理もスムーズ。納期に問題が出ることもありません」

米粉を例に取ると、破砕米から完成品に至るまでの時間は約5時間。タイ北部や中部、東北部から仕入れる原料は季節やその年によってクオリティに違いが出るため、配合を巧みに変えることで製品の均質化を図っているそうです。社長がこう付け加えます。

「サプライチェーン全体のマネジメントにも力を入れています。原料を調達し、運び、生産し、製品を相手先に送り届ける一連の流れを考えながら、原価を抑え、クオリティを維持する企業努力が続けています」

人を変えずに、マネジメントを変える

ツアー参加者が驚きを隠せなかったことがもう一つあります。

同社の工場は旧正月を除き、休みなし。働き者のこの工場を支えているのが、3シフト24時間体制で勤務する1600人もの従業員たちですが、彼ら彼女たちに定年はありません。

現場統括の担当者も65才。70才はおろか、80才を超える従業員もいます。これだけFA化を推進しながら、定年のない経営がなぜ可能なのでしょう。

「年齡ではなく、経験や能力を活かすのが私たちの経営方針。だから、60才以上の従業員向けの研修にも力を入れていますよ。機械を導入すると、仕事が奪われるのではないかと心配する従業員は多いのですが、そんな不安感を取り除くために、仕事を新たに作ることを心がけています。スタッフを家族のように扱っているんですよ。人を変えずに、マネジメントを変えるのが私たちのやり方。安心して働いてもらうことが一番です」

同社は社会貢献にも注力し、地域住民向けのお菓子教室や料理教室を頻繁に開催しています。この日も、地元の女子中学生を対象に、同社製品を使った料理教室が開かれていました。

会場には米粉を使ったベビーパウダーや薬の錠剤も展示されていました。水には溶けず、肌につけるとサラサラなテクスチャーがうれしいベビーパウダー、水に溶けるのに割れない米粉製の錠剤から、同社の開発能力の高さがうかがえます。人を変えずにマネジメントを変える経営方針が、技術を育て、同社のラインナップを広げているのです。

タイにCholeng Rice Vermicelli社あり。参加者一同、そんな思いを強くして、同社を後にしました。

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執筆 三田村 蕗子

ビジネス系の雑誌や書籍、Webメディアで活動中のフリーライター。タイをもう一つの拠点として、タイはじめとするASEANの日系企業や起業家への取材も手掛ける。新しい価値を創出するヒト、店、企業の取材が得意技。コロナ禍で絶たれたタイとの接点をどう復元するか模索中。

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