中途半端な価格設定だった
モノショップで販売していた日本製品は価格が高すぎた、と前編でお話しましたが、その価格は実は中途半端な設定でした。
Table of Contents
日本製品は高いことは確かですが、有名ブランドよりは安い価格設定でした。ちょっと無理すればヨーロッパの高級ブランド品が買えるという価格帯でした。
タイ人はブランドが大好きです。
あと少しだけお金を出せば、誰もが知る憧れのブランド品が買えるのに、クオリティが良いからといっても無名の日本のモノを買うのは抵抗がある。こう考えるタイ人が多いのです。
メイドインジャパン製品は、価値に自信があるのならもっと高く値付けした方が良かったのかもしれません。
価格を高く設定し、コストをかけて価値を伝える努力をするか、値ごろ感で勝負するか。モノショップに並ぶ日本の製品はどっちつかず。
お客様から選ばれない価格帯にとどまっていました。
買い手の気持ちを知る
モノショップでの失敗を通して僕が得た一番の学び。
それは、チャネルを本気で開拓しようとするならば買い手の気持ちに立たないと絶対にうまくいかないということです。僕は失敗を通して、シンプルな原理原則を頭に刻みました。
「日本製」イコール、タイ人の購買意欲を高める必殺技ではありません。メイドインジャパンだからといって、常にタイ人の心に響くわけでもありません。
メイドインジャパンに対して良いイメージを抱いているとしても、それがすぐに購買行動につながるわけではないのです。日本から持ってきているのだから高くても仕方がないというのは、何の言い訳にもなりません。
買い手は、価格に見合う価値を見出したとき、その商品を買いたくなる。有名なブランド品であれば「ブランド名=価値」なので、高くても買ってもらえますが、メイドインジャパンはそうではない。
だからこそタイ人の心情、タイ人の気持ち、タイ人の価値観を知らなくてはなりません。知った上で戦略を立てる必要があるのです。
よし!タイ人の客の目線で情報を整理し、タイに商品やサービスを売り込みたい日本の企業にわかりやすく伝えよう。
モノショップをクローズした後、僕はそう決心しました。これがいまのメディエーターのベースになっています。
日本の技術とタイのリソースを掛け合わせよう
収穫はほかにもあります。
日本のブランドがタイで成功するためには、タイのリソースと掛け合わせる道もあると考えるようになりました。
高い製造技術を持っている日本のメーカーにいま欠けているのは、海外の消費者のニーズに合わせることです。日本人のニーズに合わせるために作られた製品をいかに新しい市場に活かすか。ここをクリアできれば、市場開拓は可能なはずです。
タイの資源に応用して、独自の製品を作り上げる道筋も考えられます。タイと日本のコラボレーションで市場開拓を図る方法です。
どちらにしても重要なのはタイで仲間を作ること。タイの会社には日本企業と手を組んでいっしょにビジネスをやっていきたいというところがたくさんあります。
僕はモノショップを通じて、多くの百貨店のバイヤーや店舗スタッフと知り合うことができました。彼らがどのような考えでモノを仕入れ、どんなニーズを持っているのかをつかむことができた。これも大きな収穫です。
僕が得た収穫を、次は日本のブランドとタイの企業との連携に生かしていきたい。日本のモノづくりに活用する機会を積極的に創出していきたいと考えています。
独自のコンテンツにこだわりたい
いま僕は、さまざまな場所で販路開拓セミナーの講師として講演を行っていますが、そこでお話している「10倍の法則」や「チャネル開拓の法則」は、モノショップでの経験をもとに独自に構築したものです。
1円=3.5円という為替レートで見るのではなく、タイ人にとって日本製品はどれほどの価値があるのか、タイでチャネルを切り開いていく上では何が大切なのか、何に重きを置けばいいのか。
モノショップでの経験が僕に教えてくれました。
そう。僕は他の誰にもできない独自のコンテンツを手に入れたのです。その意味でもモノショップ運営には大きな価値がありました。
受託仕事に追われるのではなく、自分たちの得意分野を生かしてオリジナルのコンテンツで勝負しようと mediator の方向性が定まったのも、モノショップ以降です。僕たちはこれからも独自路線を貫く覚悟です。