簡単に諦める企業が多すぎる
僕がタイに戻ったのが2008年。
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最初の頃は日本の公的機関の仕事がメインでしたが、2010年以降、次第に民間企業からの依頼を受け販路開拓の仕事を多く手掛けるようになりました。僕がタイの市場を冷静に観察するようになったのはこのときからだったと思います。
タイに進出したい、タイへの進出を検討している。そんなお客さんからの依頼でタイの市場での可能性を探るには客観的に見ることが欠かせません。
しかし、仕事をしていくうちに、なんとももどかしい気持ちが募ってきました。
それは、タイに進出しながらうまく市場を開拓できず、失敗する企業、簡単に諦めてしまう日本の企業が非常に多かったからです。
このままでは、タイの市場は日本に合わない、タイはダメだと判断され、別の国への進出を進めていく企業が増えていくかもしれない。そんな不安が高まりました。
いま必要なのはタイのリアルを知ってもらうこと
タイでうまく販路を開拓できない日本の企業が多いのは、タイの現実をよく理解できていないからです。バンコクだけを見てタイ全部をわかったような感覚に陥ったり、人口やGDP、経済成長率といった指標でしかタイを見ていない人があまりにも多いからです。
このままではまずい。
日本からやってきたお客さんから依頼を受けて販路開拓のお手伝いをするのも大事だけれど、それよりもまず、タイのリアルを知ってもらった方がいいのではないか。
僕は日本からお客さんが来るのを待つのではなく、こちらから出かけることにしました。そうして実施しているのがセミナーなのです。
最初に手掛けたのは、JETROのコーディネーターとして主要都市を回って開催した「タイ進出の準備セミナー」でした。そこで僕は企業の個別面談を引き受けました。
その後、独立行政法人中小企業基盤整備機構と組んで、中小企業海外展開セミナー「最新!タイマーケットの攻略方法」も積極的に展開しました。
すでにこなしたセミナーの回数は50回以上。タイでも日本の会社への個別のセミナーを実施し、同じ話をもう約100回ほど繰り返してきたと思います。
経営判断できる人材がタイにやってこない
ただ、非常に残念なのが、タイの市場の現実についてお話すると、「〜だから難しい」「まだ早すぎる」と言われることが多い点です。僕が必死に伝えているにもかかわらず、あまり聞く耳を持たず、情報を大事にしない会社があることも気になる点です。
僕は日本が大好きです。僕の半分は日本で出来上がっているといっても大げさではありません。
だからこそ日本を元気にしたいと心から願い、行動に移していますが、正直なところ、技術革新にしても家電品にしても工業団地においても、タイにおける日本の存在感は低下傾向にあります。日本の市場が今後さらに縮小していくのは間違いないのですから、もっとタイへの進出を真剣に検討してもらいたいし、出るにしても進出を見送るにしても迅速に決断してもらいたいと思うのですが、いかんせん現実は異なります。
判断が遅いのです。決断に時間がかかりすぎるのです。
それは判断できる人材がタイに来ないから。これに尽きます。
日本でセミナーを聞いて、タイ進出に本腰を入れようとタイにやってきても、そこに経営判断できる人材がいません。「まず本社の指示を仰いでから」という企業が本当に多いのです。決断を遅らせている間にタイミングを逸してしまう、というケースは決して珍しくありません。
これからも貪欲に発信を続けたい
でも僕は諦めません。
セミナーは根気強く、今後も続けます。日本各地を回って、熱心にタイのマーケットの攻略方法を説いて回ります。そして、タイに来るときにはジャッジができる人材をぜひ送ってほしいと語り続けます。
もちろんタイでもセミナーは実施していきます。blogや動画を通して、よりタイの実態を伝えられる情報を発信していくつもりです。
経験値を増やし、知名度も上がってきたせいか、大企業と個別に会ってお話をさせていただく機会も増えました。
メディアにも積極的に進出し、僕は日本の企業に声を大にして「タイとはこういう国なんだ」「タイのマーケットはこんな風に考えて臨むべきなのだ」ということを伝えていきたいと思っています。
それが、日本語ができて、日本人の考えや思考をよく理解できて、しかもタイ語ができて(笑)、タイ人の価値観や発想もわかる僕ならではの使命。タイと日本の架け橋としての役割をまっとうしていきます。