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タイ日本修好130周年

2017.9.27

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日・タイ修好130周年「誰も語らなかった日本人・日本的経営への思いと期待」 午後の部

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2017年6月28日、日・タイ修好130周年を記念して、タイ国日本国費留学生基金による記念講演会が行われました。

今回の講演会のテーマは、「誰も語らなかった日本人・日本的経営への思いと期待」。日本人がタイで円滑に仕事を随行し、タイ人にうまく接するためにはどうしたら良いのでしょうか?ひょっとすると、日本人よりも“日本人”を客観的に分析し、深く理解している講師陣をお招きし、日本人とタイ人に対する鋭く示唆に富んだお話をしていただきました。今回は二回に渡り講演会の模様をお伝えさせて頂きます。

日本人より日本を知る?!「日本」をタイ人はこう見ている

第二部は、自身も日本に留学経験があり、現在は日タイ双方の橋渡し役としてご活躍の4人のパネリストをお招きし、こちらも日タイのために奔走するMediator代表のガンタトーンがモデレーターを務めさせていただいた大爆笑パネルディスカッションの模様をお届けします。ディスカッションはもちろんすべて日本語です。

テーマは、「日タイの文化、価値観の相違点と共通点」と「タイでより仕事を円滑にするためにはどうしたら良いのか?」。

まず始めに、モデレーターのガンタトーンが、日本人とタイ人の共通点、相違点に焦点をあてパネリストの皆さんに問いかけました。

「タイ人と日本人。相違点と共通点をどのようにお考えでしょうか?」

タイ人日本人違い

タイ人と日本人。共通点と相違点。

日本国費留学生14期生でタイ王国元日本留学生協会会長、元泰日経済技術振興協会日本語学校校長等を歴任し、両国の皇室・王室通訳も行なった日本語通訳界の母プッサディー・ナワウィチット氏は言います。

「日本人とタイ人は、アジア人・主食が米・仏教を信仰というようなキーワードから、共通点が多いように思われますね。しかし、ジャポニカ米と長粒米があるお米や大乗仏教と上座部仏教がある仏教など種類があるように、その共通点の中には細かな違いがあります。」

二度にわたり合計9年間の在京タイ王国大使館に勤務し、参事官や次席公使を歴任、2016年3月よりタイ国外務省東アジア局局長を務めるシントン・ラーピセートパン氏は、気候や風土がそれぞれの国民の“計画性”に影響しているのではと話します。

「日本には四季があり、年に一回しか米を作ることができませんね。災害リスクも考慮して、冬を越せる分の食べ物を蓄えておく計画性が必要です。一方、タイは年中暖かく、米の二毛作、三毛作が可能です。川に行けば魚がいて、手を伸ばせばフルーツが採れる。資源が豊富で、台風、地震、津波などの災害もほとんどないので計画する必要がないのです。」

日本国費留学生27期生で泰日工業大学日本的経営研究科講師、タイ王国日本語通訳翻訳会会長を務めるブンチュー・タンティラッタナスントーン氏は、「タイ人は〜」「日本人は〜」と定義するのは難しいと前置きした上で、それぞれの国がもつ環境的背景の違いが国民性の相違点を生み出すという意見に賛成です。

「二分化するとすれば、タイ人は“多様性”で日本人は“一様性”と言えるのではないでしょうか。タイ人は、自由に思うがまま行動することで満足感を感じる一方、日本人は計画通りに物事が進むことに達成感を感じます。逆に、計画通りに進まないと不安なので、失敗したらどうするか、という“もしも”の時のことも考えていますね。」

続けて、同氏から参加者に質問が投げかけられます。

「スーパーへ買い物に行く時、買い物リストは作りませんか?」頷く参加者に対して同氏は言います。

「日本人は、買い物リストをよく作りますね。計画して買い物に行く。タイ人に買い物リストは必要ありません。お店に行って、そこで見つけた欲しいものを買います。日本人は、買い物リストにあるものを目的に買い物に行きますが、もしリストにあるものが買えなければ不満ではないですか?タイ人は計画をするという習慣があまりありません。何か買い物ができたら、それでサバイサバイ(心地良い、気持ちが良い)なんです。」

確かに、日本人は「計画通り」を好む人が相対的に多いかもしれません。パネリストの皆さんが口を揃えて言うのは、元々の国が持つ自然環境が両国民の価値観の違いを生み出しているということでした。

元三洋半導体タイランド取締役を16年、元自動車部品製造パイオラックスタイランドのGeneral Managerを6年、現在は、泰日経済技術振興協会TPA事務局長を務めるポーンチャイ・ヨンワッタナスントン氏は、仕事に対する価値観も日本人とタイ人では大きな違いがあると言います。

タイ人日本人留学

「タイ人が働く時に大切にすることは“関係性”です。また、タイ人は間違えることや失敗することを非常に恐れていて、少しでも疑われたと思うとついつい言い訳をしてしまいます。ただ、それを理由に他の従業員の前で彼らを怒ったりすると、周りの目を気にするタイ人はすぐに会社を辞めてしまいます。」

タイ人にとって、転職は当たり前のことです。タイでは転職すれば給料は上がり、有能な人材と見なされるからです。“関係性”が重要なタイ人は、関係が悪化したと思うと会社を変えるということに躊躇はありません。長年数々の日系企業でタイ人と日本人の間に入って働いていたからこその同氏の視点です。

モデレーターのガンタトーン氏も付け加えます。

「日本人とタイ人では、会社での“信頼”の築き方が違います。日本人はどちらかというと“タスクベース”ですが、タイ人は“関係ベース”と言えます。タスクベースとは、一緒に仕事をする上で相手がしてくれたことに対して信頼を積み重ねるということ。一方の関係ベースは、一緒に食事をしたりお茶をしたり、人として付き合えるかどうかで信頼関係を気づいていくと言うことです。」

タイでは、履歴書の経歴欄に企業名が多ければ多いほど、経験とスキルが豊富な人材とみなされます。履歴書に企業名が多いことを“汚す”と捉える日本人とは大きな違いがありますね。風土、風習が違えば文化や価値観が違うのは当たり前。それは優劣ではありません。

日本人がタイ、さらに世界で働くために

パネルディスカッションもいよいよ後半です。文化や価値観の違いがあるということを理解した上で、日本企業がタイで円滑に仕事を進めるには、どうしたら良いのでしょうか?日本人と日本企業をよく理解する皆さんから日本企業にアドバイスです。

プッサディー氏は、価値観や文化の違いに加えて、子どもの頃の育て方やしつけの方法、教育制度や雇用の方針も全く違うことを指摘します。

「多くの日本企業は、タイへ進出した時に100%日本のやり方で仕事をしようとしますが、それだと事業の成功率は下がってしまうでしょう。」

そして、シントン氏は日本企業のこれからの行く末を懸念しています。変化の流れが速い世界で、日本の将来を担う若い世代が今までの日本人的な“ルールに従った共同作業体制”で世界の競争に勝てるのか、と。

Resilience(強靭さ、適応力)という言葉を色々なところで耳にする現在、日本企業は、従来の体制や戦略を見直し、変化の激しい世界に適応していく必要があるのではという提案がありました。中国とのビジネス戦略を比較して、こんな話も。

「中国の仕事は、Fast but Unsure(速いが不確)。日本の仕事は、Slow but sure (確かだが遅い)。日本の仕事はとても慎重で数々の調査を終えてから事業化を行うので事業性は確実かもしれません。しかし、遅いです。商品開発でも違いがあります。中国は売れるものを作る、つまり、市場でニーズがあるものしか作りません。一方の日本は、技術者が作りたいものを作り、メーカーが良いと思ったものを売っているような感じがします。本当に需要があるものを作っているのでしょうか?日本の確かな品質や技術は世界に誇れる強みですが、この体制のままでは世界に遅れを取ってしまうのではないかと心配です。」

今の世の中で勝ち残るには、タイだけではなく世界のマーケットでの戦い方をもう一度見直す必要がありそうですね。

タイ日本修好130周年

ブンチュー氏からは、日本人と働くタイ人に取ったアンケート結果を基に、日本人にとっては少し耳の痛くなる指摘がありました。

「特にアンケートで多かったのは、日本人は、阿吽の呼吸で理解するのが普通なのか、情報共有をあまりしてくれず、また指示も遅いという意見です。また、タイ人を見下すような態度が見られると答えた人もいます。先ほどの話にあったように、タイ人と日本人では働き方が違います。日本人のような働き方をしてほしいというのは、日本人のエゴかもしれません。共有や説明をしてくれないと、日本人的な働き方もわかりません。」

タイと日本では、言葉、価値観、文化など色々な面で違いがあります。日本人がよく使う「空気を読む」「察する」では通じません。しっかりと言葉に出しで言わなければ伝わらないのです。お互いが歩み寄り、思いを伝える努力をすることが相互理解への第一歩と言えそうです。

情報共有に関して、プッサディー氏は言います。

「今回のテーマは“誰も語らなかった日本人・日本的経営の思いと期待”です。実は、今日議論された話は、多くの人が以前から言っていることです。ただ、今年でタイと日本の友好関係は130年ととても長くなりますが、未だに問題はあるようですね。大切なのは情報共有と考えています。オーダー通りに作業だけするだけでは、やる気も損なわれます。日本人同士だけで共有するのではなく、タイ人にも共有してみてください。」

日本人とタイ人。足して2で割るとちょうど良い。

そして、日本人とタイ人を客観的に分析するガンタトーン氏はこうまとめます。

「日本人は“線”で人生を考えていますが、タイ人は “円”で生きています。日本人は、何年後どうしたい、残りの人生をどう設計したいなど計画や目標がありますね。ただ、タイ人は、そのような明確な目標はありません。タイ人は、自分に関係のある家族、友人、職場の人を含め、ここ3年、5年で彼らと楽しく過ごすにはどうしたら良いかを考えています。先ほど説明したように、タイ人にとって“関係性”というのはとても重要なのです。タイ人と働き成功している日本人は、会社の中で“お父さん”的な立場になっています。会社の社員を家族のように考え、お父さん、お兄さんのように接することが、タイ人とうまく働くポイントです。」

日本での就学、就労経験が20年以上のシントン氏は、逆に日本の立場から最後に補足します。

「日本人と日本企業に対してこうして欲しいとか、どうするべきという話が出ました。ただ一方で、日本人からもタイ人に対して言いたいことはたくさんあるでしょう。タイ人にはぴったりな言葉“サバイサバイ(楽)”などは、規律正しく真面目な日本人には“だらしない”と映るかもしれません。ありえないことではありますが、日本人とタイ人は足して2で割るとベストな国になりそうですね。」

会場からも笑いと賛成の拍手が聞こえました。

タイ人と日本人。違いも多い一方で、実は共通点も多いのです。お互いの共通点を見つけながら、相違点とどううまく付き合っていくのか、今回のパネルディスカッションにタイ人と日本人が上手に付き合うヒントが隠れていたのではないでしょうか。

タイ人日本人共に働く