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2017.9.13

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日・タイ修好130周年「誰も語らなかった日本人・日本的経営への思いと期待」午前の部

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2017年6月28日、日・タイ修好130周年を記念して、タイ国日本国費留学生基金による記念講演会が行われました。

今回の講演会のテーマは、「誰も語らなかった日本人・日本的経営への思いと期待」。日本人がタイで円滑に仕事を随行し、タイ人にうまく接するためにはどうしたら良いのでしょうか?ひょっとすると、日本人よりも”日本人”を客観的に分析し、深く理解している講師陣をお招きし、日本人とタイ人に対する鋭く示唆に富んだお話をしていただきました。今回は二回に渡り講演会の模様をお伝えさせて頂きます。

海を渡ったタイ人留学生達

今から半世紀以上前の1954年、タイ国費留学生の第1期生として20名のタイ人留学生が日本に赴きました。現在、タイ国日本国費留学生基金には日本に留学経験のある元留学生が集まり、両国の教育水準の向上と相互理解を目的に、学術セミナーや交流会、社会奉仕活動を行なっています。現在までに日本へ留学したタイ人国費留学生は数千人に上り、彼らは今、政府間のみならず草の根レベルで日タイの交流を深める要として、両国の友好関係の維持に貢献しています。

午前の部では、ジェトロバンコク事務の三又裕生所長とタイ投資委員会(BOI)投資顧問のボンコット・アヌロート博士から日本とタイの投資面での繋がりについてご講演いただき、チュラロンコン大学経済学部長のウォラウェート・スワンラダー教授からは、タイにおける少子高齢化についてご講演いただきました。皆さんのプレゼンテーションは全て日本語で行われています。

投資先として魅力的な国、タイ

ジェトロバンコク事務所長の三又氏は、タイと日本は、お互いに他の国とは違う重要な位置付けをしているとした上で、投資先としてのタイの魅力を説明しました。

「まず、タイにとって日本は最大の投資国です。2016年、タイへの直接投資残高は1,970億ドルを超えましたが、そのうちの30%は日本からの投資です。特に製造業への比重が大きく、340億円が投資されています。ASEAN10カ国の中で、日本はタイに最も投資をしている国なのです。」

日本企業にとってタイの魅力はどこにあるでしょうか?同氏は、その理由を3点を挙げました。

「第一に整っている投資環境です。国内のインフラは整備されており、機械設備や材料、部品などの現地(タイ国内)調達率が57%と他のASEAN諸国よりも断然高いです。熟年労働者も多く人的資源が豊富なことに加え、必要なパーツや部品を現地で揃えることができるので、全てのサプライチェーンを一貫して行うことが可能です。第二に、政府が外資企業の誘致に積極的で、投資に関する政策や体制が整えられていることです。そして最後に有望なマーケットです。量より“質”を求める消費者が年々増加しており、付加価値の高い商品やサービスへの需要が高まってきています。また、日本とタイは関係性が良く、タイ人は日本人にフレンドリーであり、日本商品やサービスに良い”質”のイメージがあることが挙げられます。」

一方、タイは経済成長に伴って少子高齢化が進んでおり、タイにはもはや安価な人件費という強みはありません。また、製造業の拠点地としてある程度の成長を遂げたが、なかなか「中所得国」から抜け出すことが難しいという課題もあります。しかしながら現在では、サービス業や飲食業、建設業などの非製造業の分野も成長しつつあり期待が持てる部分もあります。何より前述のように、日本企業にとって投資しやすい環境が整っていることがタイを投資先として選ぶ最大のメリットと言えるでしょう。

タイ国日本国費留学生基金
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“中所得国の罠”から抜けられない

そもそも「中所得国の罠」とは何でしょうか?内閣府のホームページには下記のように説明されています。

「中所得国の罠」とは、多くの途上国が経済発展により一人当たりGDPが中程度の水準(中所得)に達した後、発展パターンや戦略を転換できず、成長率が低下、あるいは長期にわたって低迷することを指す。これは、開発経済学でゆるやかに共有されている概念であり、その端緒は世界銀行が07年に発表した報告書にあるとみられている。

「タイは、今こそクリエイティビティやイノベーションを生み出し、スマート産業、スマートシティ、スマート国民へと成長するべき時。」

こう話すのは、タイ投資委員会(BOI)投資顧問のボンコット氏です。タイは「中所得国の罠」に陥り、経済の成長速度が遅くなってきていると指摘します。タイ政府は、高所得国への成長のため「タイランド4.0」という構想を打ち出し、農業、軽工業、重工業に続いて、モノベースから価値ベースの経済への移行を図っています。

「高所得国への成長には、社会と経済のバランスを保つことが前提です。経済成長を推し進めつつも環境には配慮し、一部の人だけではなく全ての人々が経済成長の恩恵にあずかれる成長をしなければなりません。現プラユット首相もよく “Leave no one behind(後ろに一人も残さない)”という言葉を使っています。それは、一部の人だけに利益が集中し格差や貧富の差が広がるのを避けるということなのです。」

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中所得国からの脱却には、産業の高度化だけではなく、タイのすべての人に恵のある経済社会システムを実現する必要があります。タイ投資委員会では、2年前から「タイランド4.0」の構想に合わせて投資奨励政策を導入しています。最近では、製造業だけではなく、非製造業の日本企業の進出も増加してきています。タイの強みである製造業は維持したまま、新しいイノベーションを取り入れた付加価値の高い商品やサービスが求められています。そして、投資委員会が特に重点を置くのは、”人材”と”技術”と同氏は説明します。

「奨励企業には、産学連携プログラムを実施するよう義務付けています。まだ実施件数は少ないものの、民間企業に学生をインターンとして派遣するなどのプロジェクトがあり、人材育成に特に力を入れています。また、技術開発の面では、投資奨励キャンペーンとして特に4つのコアとなる分野、バイオ、ナノ、先端素材技術、デジタル技術開発の分野で投資を行う企業には10年間の免税期間を設けています。高い技術を持つ人材が豊富な日本企業には、是非、タイで事業展開をして欲しいと思っています」

「少子高齢化」の到来。”少子高齢化先進国”日本に学べ。

続いて、チュラロンコン大学経済学部長のウォラウェート教授からは、三又氏が課題の一つとして挙げていたタイの少子高齢化について解説がされました。

「2010年、60歳以上のタイの高齢者数は10%を超え、本格的に高齢化社会が到来したと言われています。医療技術の発展によって平均寿命が伸び、2040年には約1/3が高齢者になると言われており、現在の日本と同じくらいの割合になります。1980年代後半からは合計特殊出生率も低下しており、2040年には24歳以下の人口が10%以下となり、生産力人口は減少すると見込まれています。高齢化社会の到来は、日本と同様に労働市場の縮小と若い世代の負担の増大が懸念されます。年金制度で蓄積された資本を定年後に活用でき、働かなくても暮らすことができる日本とは異なり、タイには社会保障制度や年金制度が広く普及していません。そのため、多くの高齢者は、勤労し続けるか子どもの世話にならなければならず、事実、この20年の調査によると、約8割の高齢者は子どもから金銭的支援を受けています。」

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タイ政府には、社会保障制度や年金制度、介護サービの整備への迅速な対応が求められています。タイにも年金制度や介護サービスは存在していますが、全ての地域を網羅し、低所得者層から富裕層まで全ての人がそのサービスにアクセスできる状態ではまだありません。介護に関しては、サービスが二分化しています。貧しい家庭向けには公的な福祉施設やNPOが支援し、富裕層は私立の老人ホームや住み込みヘルパーサービスなどを利用しています。そして、その間にいる中間層は両方ともアクセスが難しい状況と言います。また、バンコクとそれ以外の地方の格差も激しく、地方には政策やシステムが行き届いていません。地方には、各自治体による家庭訪問や基礎的な介護ケア、健康診断やリハビリなどを提供できるコミュニティサービスの仕組みが必要と言います。一方、人と人の繋がりが浅く、コミュニティベースの協力が難しい都市部では、NPOや民間企業の需要の拡大が見込まれているのです。

「日本は少子高齢化の大先輩です。日本の対策を見習い、タイも上手に少子高齢化社会と付き合っていきたいと思っています。」

各地域や所得者層に合わせてサービスと体制を整えること、政府と地方自治体が役割を分担し地域の特性に合ったシステムを構築することがこれからの少子高齢化と上手く付き合う鍵と言えそうです。経済の発展に従い新たな壁に直面するタイ。同様の課題をかけてきた日本は、タイとの協力関係をさらに強化し、両国の持続可能な発展に向けて手を組む必要があるのではないでしょうか。

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