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2017.4.21

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良い組織文化を作るには?|「アジア式組織運営」を考える vol.08

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今回は組織文化(Organizational Culture)の話に触れたいと思います。組織文化というと皆さんはどんなものを思い浮かべるでしょうか。

「挨拶や声掛けが多く、職場に活気がある」「なんとなくオフィスがシーンとしていて静かだ」。こうした「職場の空気」も文化の一例です。また、「一人一人が自分の仕事にしか興味が無くチームワークが悪い」「社員が過去の延長線で仕事をしがちで新しいことに挑戦しない」といった、「社員に共通する思考・行動パターン」も組織文化の代表的なものです。

組織文化は、感染力を持ちます。新しい人が入社してきても、組織の文化が良くないと、新しい社員の行動も悪い方に流されて行きます。逆に、組織文化が良いと、リーダーが何も言わなくても社員が勝手に良い行動を続けてくれるようになります。こうした良い文化を作ることは会社、組織をマネジメントしていくうえでとても大切なことです。

良い組織文化とは、「社員が無意識に良い行動を取る」状態のこと

組織文化について研究した学者Edgar Sheinによれば、組織文化には3つの要素があります。まず文化が定着している状態は、Basic Assumption(基本的仮定)と呼ばれます。やや難しい言い方をしていますが、「暗黙の了解」「無意識に当たり前になっている状態」ということです。つまり、「会社で挨拶をするのは当たり前」「オフィスを綺麗にするのは当たり前」という状態です。上司から怒られるからオフィスを綺麗にしよう、ではなく一人一人が当たり前に行動する状態、が文化が定着している、目指すべき状態です。

そのために必要なのがValues(価値観)。つまりどういうことを大切にしたいのかが、提唱されていなくてはいけません。これは、経営者や組織のリーダーが発信するべきことです。「今年はオフィスを綺麗にしよう」とリーダーが宣言したら、それは価値観が表明されたことになります。

最後に、その価値観が、何かの形となって表れている必要があります。それをArticrafts(人工物)と呼びます。例えば「オフィスを綺麗に」という価値観を提唱したいのであれば、「5S」というポスターを壁に貼る、オフィスのレイアウトを工夫する、「5Sキャンペーン」というイベントがある、、などの具体的なアクションが考えられます。また、5Sをマネジャーの評価に組み込むなどの人事制度との接続も重要です。こうした、「施策」に落としていくことが価値観を形にします。こうした3つのレベルの橋渡しがしっかりなされているか?を確認していくことが、文化を作ることに繋がります。

「壊れた窓」を直す

良い文化を維持するために大切な考え方として、Broken Window Theory(割れ窓理論)というものがあります。これは、人間の心理が無意識に緩んでいくことを証明した社会心理学の考え方です。あるところに、窓が壊れた空き家が放置されていました。すると「この家は誰にも管理されていないからイタズラしてもいいだろう」と判断され、ほかの窓も誰かによってどんどん割られてしまったそうです。しかし、最初の壊れた窓を直してしまうと、今度は他の窓を壊されることはなくなった、というものです。この話は、人間の行動がいかにして緩んでいくか、を示唆しています。

pexels-photo

この考えはニューヨークの犯罪率を低下する施策に取り入れられ、有名になりました。当時のニューヨークの市長であったジュリアーニ市長は、割れ窓理論を元に、徹底的に落書きなどの軽微な犯罪を取り締まりました。その結果、凶悪犯罪の発生率も激減したということです。また、一時期業績不振に陥ったアップル社をスティーブジョブズが立て直したのも、こうした地道な活動でした。当時のアップルでは、遅刻が常態化し、犬を連れてきて遊んでいる社員もいたそうです。それに対して細かな規律を再徹底することが、その後のアップル社の浮上につながったと言われています。

文化を維持するには日々の努力が必要です。組織には文化に反する行動を取る人が必ず出ることはやむをえません。そうした「小さな乱れ」を見逃さずしっかりと指摘していくことで、大きな風土の乱れを防止することが出来ます。文化の乱れは、リーダーの「あきらめ」や「見逃し」から始まります。ちょっとした規律の乱れを「窓を直す」と思って、対応することが必要です。

魚を飼うことは、水を飼うこと

タイはじめ東南アジアでは、組織の人の入れ替わりが激しい社会です。離職率30%の会社なら、3-4年で組織のほとんどの人が入れ替わってしまうことになります。しかし、人が入れ替わっても、維持されるのが文化です。例えばサッカーで言えば、「ブラジルの攻撃的サッカー」「イタリアの守り勝つサッカー」といったものは、選手が入れ替わっても継承されます。人の入れ替わりにかかわらず、文化を維持していく活動は、会社にとって最も大切なことの一つです。

「魚を飼うことは、水を飼うこと」という言葉があります。水槽に濁った水を入れていては、せっかく元気な魚を連れてきてもすぐに死んでしまうでしょう。大切なのは、個々の魚(人材)だけに目を捕らわれるのではなく、水槽の中の水の質(組織文化)に気を配ることだ、ということをこの言葉は教えてくれます。

良い文化を作り続けるための行動が、我々は取れているでしょうか。今一度考える機会にしてみて頂ければ幸いです。

บทความภาษาไทย

「アジア式組織運営」を考える ~日タイ混成チームで仕事をして見えてきたもの~とは?

このブログは、タイで仕事をする日本人、これからタイに進出することに興味のある日系企業、またタイにおいて日本や日本人と何かしらかかわって仕事をしているタイ人…様々な方に向けて、人事コンサルタントとしての知見と経験を使って発信をしています。大切な友人である日本人とタイ人がより良い関係になるように、また私自身が自分のチームメンバーをちゃんと幸せにできることを目指して、日本語とタイ語の両方で発信していくことにチャレンジします。(関連記事はこちら)(タイ語版はこちら)
中村 勝裕:上智大学卒業後、2001年ネスレ日本株式会社に入社。2005年株式会社リンクアンドモチベーションに転職し、人材育成、組織変革のプロジェクトを担当。2010年、株式会社グロービスに転職し、シンガポールへ赴任。東南アジアでの人材開発プロジェクトを手掛ける。2014年、東南アジア発の組織人事コンサルティング会社として、Asian Identity を設立し、同社代表に就任。現在バンコクを起点として、東南アジアの企業に対して、人材採用・人材育成・組織風土・人事評価、といった領域でのサービスを提供している。

Asian Identity Co., Ltd.
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