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2016.9.22

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「美味しい牛乳を届けたい!」乳製品市場シェアNO.1を獲得したCP Meijiの挑戦とは。

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快進撃の秘密を紐解く

メディエイターが開催する『タイ進出・販路開拓セミナー』も回を重ねて、3回目。今回はCP Meiji でモダントレードを統括する部署のアシスタントバイスプレジデントをつとめている Mr. Phonthep さんにゲストスピーカーとしてご登場いただき、タイ人消費者の志向に応えた商品開発や販売戦略のあり方についてお聞きしました。日本の製品をタイの市場に浸透させるにはどんな心得、戦術で臨むべきなのか。タイに進出した企業、進出を計画している企業にとって示唆に富む内容をご紹介します。

市場にパスチャライズ牛乳を投入

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Phonthepさんのお話は、3つのテーマに沿って披露されました。まずはCP Meijiについて、次がモダントレード*について、最後がローカライズについてです。前職で、P&Gやロレアルといった大手外資系企業に勤務し、過去16年間にわたってモダントレードの攻略を得意としてきたPhonthepさんならではのお話が繰り広げられました。

注)モダントレードとはコンビニやハイパーマーケットといった近代的な流通を指す。この対極にあるのが市場や小さな食料品店などのトラディショナルトレード。

まず、PhonthepさんはCP Meijiの概要からお話をスタート。社名からわかるように、同社は明治乳業とタイ最大の財閥であるCPグループの一員であるCPフーズとの合弁会社です。設立は1989年。なぜ明治乳業はCPグループを手を組んだのでしょう。

その理由をPhonthepさんはこう語ります。

「CPと組んだ方が、牛乳の原材料である生乳を調達しやすいからです。タイ側は原料を探し、生産した後の販売についてもCP側が手がけています。明治が担っているのは、工場での品質管理。日本品質の製品を送り出す役割です」

両者が役割分担することによって生み出されれたCP Meijiの牛乳には、それまでタイの市場に流通していた牛乳とは大きな違いがありました。それは、低温で殺菌しているパスチャライズ牛乳であるということです。

「CP Meijiが参入するまで、タイの市場はUHT(高温殺菌牛乳)が中心でした。UHTと比べるとパスチャライズ牛乳は、牛乳本来の栄養を残したまま殺菌されているので風味がいい。飲み比べていただければ明らかです。CP Meijiの牛乳は美味しいですよ(笑)。ただし、日持ちは短くなる。UHT牛乳は常温での流通が可能ですが、パスチャライズ牛乳は物流の過程での厳しい温度管理が不可欠なんです」

風味が良い分、賞味期限が短く、適切な温度管理が求められるパスチャライズ牛乳を消費者のもとに適切な状態で届けるため、CP Meijiはモダントレードを開拓する必要があったのです。

小売の目線に立ち、フォーマットにあった提案が必須

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2番目のテーマであり、CP Meijiの現在を語る上では欠かせないチャネルであるモダントレードについて、Phonthepさんは図表を見せながら、その歴史や役割を語ってくれました。

「外資系だけではなく、タイのローカル企業も新しいモダントレードの店を次々に作り始めたのが約10年前。以後、店舗数はどんどん増え、例えばコンビニ業界では、セブン-イレブンの店舗数は今年3月で8986店に達し、現在は9200店を超えています。続くテスコロータスは1462店。コンビニに限っていえば、セブン-イレブンが圧倒的なシェアを持っています。ハイパーマーケットで強いのはテスコロータス、ドラッグストアではワトソンズがナンバーワンのシェアを占めています。ただし、10年を経過したいま、モダントレードの出店ペースは落ちてきました。コンビニチェーンの成長率はどこも3%以下。低成長率のサイクルに入っています。とはいえ、激しい競争が繰り広げていることに変わりません。私たちは、それぞれのチェーンの現状を知った上で、小売の目線に立ち、フォーマットにあった提案をしています」

Phonthepさんが例に挙げたのが商品の容量です。CP Meijiの牛乳には830mlのサイズがありますが、これはテスコロータスのようなハイパーマーケット向きの容量。コンビニには200mlや450ml入りの、買ってすぐに飲める小さいサイズが求められているのです。

CP Meijiがセブン-イレブンと組んで開発している「オンリー@セブン-イレブン」という限定商品についても、興味深い話が披露されました。

「これも小売の視点に立った上での商品開発です。自分が口にする食品については、消費者はどんなメーカーが作っているかを重視します。ブランドが重視されるんですね。セブン-イレブンが独自にPBを打ち出しても、消費者の支持を獲得するのは難しいでしょう。しかし、CP Meijiが製造した商品であれば違います」

「オンリー@セブン-イレブン」では、いろいろな味の牛乳を揃えることで他店と差別化を図り、消費者の支持を得たいセブン-イレブン、チャネルとの接点を深め、売り場を確保したいCP Meijiの意図が一致し、生まれました。まさに、小売の目線に立ち、フォーマットにあった提案が具現化した商品といえるでしょう。

そのトレンドは本当に続くのか

3番めのテーマであるローカライズについて、Phonthepさんは言います。

「牛乳の品質については日本のスタンダードを採用し、一切ローカライズしていません。タイの法律で定められている数字を上回るクオリティコントロールを実施しています」

品質面については絶対的な日本基準を採用した上で、タイ人の志向に合わせたラインナップを追求する。牛乳であれば、ストロベリーやチョコレート、バナナ、メロン、スイカといったフレーバーをプラスする。そんなメリハリの効いた商品設計がローカライズの本質であることがわかります。

Phonthepさんは、事前リサーチの重要性も強調します。

「流行したかと思ったら、すぐに市場から消えてしまう商品が少なくありません。例えば、3、4年前には『コアラのマーチ』が大ヒットし、最近ではグリコのアイスクリームなどがそうですね。売れそうだからといって生産ラインを急拡大してしまうと人気が衰えたときに深刻な事態になる。だから、トレンドがどれぐらい続きそうなのかをキャッチし、見据えていかなければなりません」

ローカライズには、その国の小売や消費者に与えるメリットの追求も含まれます。

「私が以前P&Gに勤務していたとき、大人向けのウエットティッシュを開発しました。それまで市場には子供用しかなく、大人は仕方なく子供用を使っていたからです。これは非常によく売れました。消費者にも歓迎され、新しい市場を創造したことで小売にも喜ばれた。ヒット商品に欠かせないポイントです」

日本語には「三方良し」という言葉があります。近江商人が提唱していた「売り手よし・買い手よし・世間よし」の精神ですが、ローカライズに置き換えれば「売り手よし(メーカー)・買い手よし(流通)・世間よし(消費者)」。その国、その市場にとっての三方良しの追求が成功の決め手なのです。

ブルガリアヨーグルト大ヒットの舞台裏

4年前、CP Meijiはブルガリアヨーグルトの発売をスタートし、大ヒットをおさめました。人気はいまも継続しており、市場ではナンバー2の位置にまで上り詰めています。

柔らかい食感のヨーグルトしかない市場に、固い食感を特徴とするブルガリアヨーグルトを投入するにあたり、Phonthepさんは人気俳優のJames Jiさんを起用しました。

「ブルガリアヨーグルトは新しいタイプの商品なので、カップの形状も他の商品とは違って角形を採用し、甘さも控えめにしました。しかし、見た前から既存商品とは違いますから、まず手に取ってもらい、食べてもらってその良さを体験してもらわなければ2個目、3個目の購入にはつながりません。そのためにJames Jiさんを起用しましたが、狙い通り、最初の1個の購入に大いに貢献してくれました。ちょうどタイ人の健康志向が強くなり、甘い=太るという意識が高まっていた時期と重なったのも追い風でしたね」

ブルガリアヨーグルトの価格は1個20バーツ。競合の13~14バーツという価格と比較すると割高ですが、斬新な商品設計やパッケージを消費者はこれまでにない「価値」がある商品として受け止めたのです。

ブルガリアヨーグルトにより、CP Meijiは牛乳以外のカテゴリー確立に成功。パスチャライズ牛乳と合わせると市場シェアは現在ナンバーワン。今年は新たに投入した飲むヨーグルトも好調に推移しているとか。快進撃は今後も続きそうです。

ターゲット層に向く媒体を検証する

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お話を終えたところで、質疑応答の時間が始まりました。寄せられた質問の中から、「口コミやSNSの活用」についてのPhonthepさんの回答を紹介しましょう。

SNSが浸透し、口コミの評価が購買行動に大きな影響を与えているタイにおいて、SNSの活用は不可欠なのか。この問いに対して、Phonthepさんはこう答えます。

「まずターゲットグループを見極める必要があります。自分たちが狙う層が果たしてSNSを利用している層なのかどうか。CP Meijiの例でいえば、牛乳についてはテレビCMがもっとも効果的です。というのも、視聴者が牛乳についてすでによく知っているからです。しかし、フィットネス用のプロテイン配合の牛乳となると、テレビCMの短い時間ではその効果や機能について説明するには時間が足りません。オンラインメディアを使って啓発を行い、徐々にファンを育てていく取り組みが効果的。ターゲットを定めて、テレビ、印刷物、SNSなどのオンラインメディアなど、どれが向いているかを検証して、どこにいくら投入すれば効果的かを検証する必要があります」

最後に、物流についての質問が寄せられました。タイのコールドチェーンは整備されているのか否か。Phonthepさんの答えは明快です。

「みなさんが思われている以上に、タイのコールドチェーンは整備されています。物流で動くすべての車にGPSと温度センサーも付いていて、どの地点で温度が上がっているのか、下がっているのか、メーカーは追跡可能なのです。モダントレードも物流センターの稼働前に品質チェックを怠らず実施していますよ」 

日本人は漠然と、タイのコールドチェーンは未整備ではないか、日本の方が優れているのではないかと考えがちですが、実態はさにあらず。モダントレードにおいてはシビアな品質管理体制が敷かれています。品質管理が徹底された商品でなければモダントレードでは通用しない時代になったともいえるでしょう。

三田村 蕗子(ライター):日本のビジネス誌、流通専門誌、ビジネス書を中心に活動するフリーライター。2014年11月、拠点をバンコクに移し日本とタイを行き来する。鋭い視点で、活気づくタイとASEANのビジネス事情を取材している。
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