「残念」な日本企業
以前にもお話したと思いますが、タイ人はもともと日本の企業に対して非常に良い印象を持っています。
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テクノロジーについても、企業経営についても、産業全体についても日本の印象は抜群に良かった。日本はアジアでアンバーワンの豊かな国です。優れている国であり、尊敬されていたといっても過言ではないと思います。
しかし、実際に日本の企業や日本人ビジネスマンと触れてみると、そうした好印象が薄れてしまったという声が多くのタイ人から漏れています。「がっかりした」という声も少なくありません。
いわく、意思決定のスピードが遅い、柔軟性がない、市場に合わないものを持ってくる、ローカライズできない等など。一言でまとめると「残念」ということになるでしょう。それがタイの人々の日本企業に対する率直な印象なのです。
成功体験が足を引っ張っている
もちろん、良いイメージはまだ残っています。決してゼロにはなっていない。ただし、いまはプラスの資産を食いつぶしている状況です。
高度経済成長時代の日本の製造業は、東京大学の藤本隆宏教授が指摘しているように、擦り合わせ型の開発を強みとしてきました。自動車がその代表的な製品です。部門間の綿密な調整をもとに部品の仕様をすりあわせ、製品ごとに最適設計を行うことで高い性能やクオリティを実現してきた。これは間違いなく、日本企業ならではの強みです。
しかし、いまはその成功体験こそが日本企業の足を引っ張っているように思えてなりません。これは製造業に限らない傾向でしょう。
大手の日本企業に勤務している日本人の大半は、長くその会社に在籍している人たちです。新しい動きにはあまり敏感ではなく、何か新しいことを取り入れようという意欲もそう高くありません。
すべての人がそうだというわけではありませんが、できればこれまでの成功体験通りに物事を進めていきたい、現状を維持していきたいと考えている人が非常に多いと思うのです。
明るい未来が見えてきた
過去の成功体験にとらわれたままでは、せっかくの資産がなくなってしまう。「残念」なイメージを払拭できないままでは、遅かれ早かれ、資産を食いつぶす結果に陥ってしまう。僕はここ数年、そうした危機感を持っていました。
ここで、「持っていました」と過去形で書いたのは、前編で書いたように日本のスタートアップの存在を知り、その企業を率るビジネスパーソンと触れる中で、明るい未来が見えてきたからです。
日本人と話をしてもあまり刺激を受けることが少ないな、得るものがあまりないなーー。最近の僕のそうした印象は、日本のスタートアップの方と接点を持つことで大きく変わりました。
そうか。こんなにも自由な発想で、こんなにも斬新なアイデアを駆使して、ポジティブに前向きにビジネスを進めている人たちがいるんだ。それを肌身で感じました。
タイのスタートアップ企業を率いている人たちも同様です。彼らには、大企業のような資本金はありません。老舗企業ほどの歴史もありません。
でも、それを補ってあまりある発想と行動力がある。モチベーションも高いです。彼らといっしょに仕事ができたら、何か新しい取り組みを実現できたら、と考えるだけワクワクします(笑)。
民間ベースでビジネスマッチングを図る
彼らに共通するのはフラットな発想とロジカルな思考です。
タイだから、日本だから、国内だから、海外だからと分けて考えるのではなく、すべてをフラットな目で見ています。自由でフラットで柔軟で、なおかつ、論理的でもあります。ビジネスをスケールさせようと挑戦を続けているその姿勢には、日本もタイも関係ありません。
だから僕は決めました。
こんなにも面白い企業があることを、こんなにも刺激的な人物がいることを、僕は日タイの両方でアピールしていきたい。そして、政府系の仕事をこれまで通りに手掛けながら、民間ベースで自分たちがいいと思う日本企業の商品やサービス、僕たちが優れていると思える商品やサービスを、必要としているタイの企業にマッチングさせていきたいと思います。
チャレンジを続ける日本企業の秀逸な商品やサービスの需要は必ずタイにあるはずです。両者の結びつきを実現させていくことが僕の新たな目標です。これからは、アイデアがある日本人が旧態依然の日本の会社に見切りをつけて、タイのスタートアップで働くという選択肢だって出てくるかもしれませんよ(笑)。
僕が究極的に目指すのは、個人個人が輝くことのできる環境です。2020年以降の僕の目標がどのように進展していくのか。広がりを見せていくのか。ぜひ期待していてください。