改善には、業務改善とコミュニケーションの改善の2種類があります。どちらも企業にとっては必須の「改善」です。
Table of Contents
前編では業務改善について日本人から学んだほうが良い点について取り上げたので、後編ではコミュニケーションの改善についてフォーカスしてみたいと思います。
プミポン国王の3つのモットー
2016年に亡くなった前国王のラーマ9世は地方視察を熱心に行い、地方経済の活性化を精力的に進めてこられた方でした。そのラーマ9世はこんな言葉を残されています。
「タイの地方を開発する上ではこの3つの言葉をモットーにしている。すなわち、カウチャイ、カウトゥン、パッタナーの3つである」と。
カウチャイとは、日本語で「理解する」の意味。カウトゥンは、訳が難しいのですが、日本語にあてはめるなら「こちらから話をしにいく」こと。そして「パッタナー」は、「プロとして育成する」という意味です。
プミポン国王として国民に愛された王様は、この3つの言葉を用いるとタイの人々の心に響きやすい。そう語っていました。
「カオチャイ」「カウトゥン」「パッタナー」
この3つのモットーは、企業内でのコミュニケーションを考えている人には多くの示唆を与えています。
「カオチャイ」については、タイ語を少しでも学んだことがある方なら、馴染みのある言葉でしょう。理解することはコミュニケーションの第一歩。理解しようとする姿勢からコミュニケーションは始まり、双方の理解が深まります。
仕事を進めるときに重要なのは双方向であること。日本人がタイについて学ぶ、タイ人を理解しようとする。その一方で、タイ人も日本について学び、日本人を理解しようとする。
この両輪が揃ってはじめてコミュニケーションはコミュニケーションたり得ます。
「カウトゥン」はどうでしょうか。僕はこの言葉こそ、コミュニケーションを改善していく上では欠かせない言葉であり、考え方だと思います。
ただ待っているだけではダメ。ただ話を聞きますよという姿勢を見せるだけでもだめ。大事なのは、こちらから歩み寄り、積極的に話をしにいくことなのです。
ただ、そうはいっても簡単ではないので、外部のファシリテーターやレゴなどのツールを使うと有効でしょう。よりコミュニケーションが取れるようになり、お互いを理解しやすくなります。
日本の会社はこうした手段やノウハウを豊富に持っています。ここはやはり素晴らしいところ。ぜひとも自分たちの強みを活かし、「カウトゥン」を進めてほしいと思います。
プロとして仕事を任せよう
そして最後の「パッタナー」。
今回は、日本企業の良いところを紹介する内容にするつもりでしたが(笑)、この「パッタナー」は日本の会社はあまり得意ではない点かもしれません。
でも、「パッタナー」は絶対に必要です。ぜひとも実践してみてほしいと思います。
タイ人を理解しようと努め、タイ人に積極的に話をして、タイ人を信頼できる。そう思ったら仕事を任せてほしいのです。
それがタイ人をプロとして育てるということです。人を育てるには時間がかかりますが、まずは任せてみなければ何も始まりません。
理解し信頼関係が構築できたら、それはプロとして仕事を任せるに足る人材であるという証。「パッタナー」してください。
コミュニケーションが日本企業の良い点を活かす
日本人は真面目な人が多いです。
相手を理解しようと一生懸命な人は多く、仕事も一からちゃんと教えようとします。手順やプロセスを重視し、規律を重んじます。タイ人が学ばなければならない点は多数あります。
だからこそ、ぜひ「カオチャイ」「カウトゥン」「パッタナー」を念頭に入れて、コミュニケーションを深めてほしいのです。
コミュニケーションが改善されないままでは、タイ人はこう考えてしまいます。
日本企業のやることはわからない。
報連相と言われても、なんだかよくわからない。
優先順位をつけて仕事をやれと言われてもピンとこない。
コミュニケーションがないまま日本式の仕事のスタイルを押し付けるだけでは、事態は改善しません。「言うことを聞け」という指導はそもそも人材教育ではないのです。そこからプロの人材が育つはずがありません。
日本人の良いところ、素晴らしい点を活かすためにも、業務改善と同時にコミュニケーションの改善を図ってほしい。いまこそ、コミュニケーションについて一度考えてみませんか。