たくさんの失敗を重ねてきた
僕はこれまでたくさんの失敗を経験してきました。誇張しているわけでもなく、露悪的に言っているわけでもなく、本当にいくつもの失敗を重ねてきました。
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失敗ではないにしても、成功ともいいがたいプロジェクトもあります。僕はそうした事例から多くを学びとりました。
負け惜しみではありません。失敗は僕にビジネスの本質を教えてくれた。失敗は成功の母、とは本当のことだと思います。
今回はその中からモノショップについてお話したいと思います。
モノショップとは、自社製品をタイ・バンコクで販路開拓しようと考えている日本の小規模企業に対して販売機会を提供するショップの名前です。小規模企業の海外展開を支援するために全国商工会連合が主幹となり、mediator が現地での実際の運営を任されていました。
このモノショップの仕事を引き受けるにあたって、僕はこう思っていました。
日本には良い製品が多い。タイで売れるモノが絶対にあるはずだ。
しかし、この予想ははずれたと言わざるを得ません。反響のある商品はありましたが、全体で見れば売上は決して高いとはいえず、1年ちょっとで店を畳まざるを得なかったのです。
「生」の情報を得る場
モノショップの目的は、ショップ及びイベントでの販売機会を通じて、タイの流通関係者やタイ人消費者から日本の製品に対する評価や改善すべき点などをモニタリングし、定期的にその結果を日本の小規模企業にフィードバックすることにありました。
タイでは何が売れるのか、どういったものが支持されるのか、逆に人気がないのはどういうものなのか。何をどう改良すればいいのか。
お客様と相対し、接客する中で得られる情報は貴重です。フィルターのかかっていない「生」の情報です。それらを得て、チャネル開拓を図ることがモノショップの本来の目的でした。
モノショップの舞台はセントラルワールドの5F。売り場面積は80㎡。文句のつけようがないロケーションです。
商品のセレクトは日本側が行いました。選ばれたのは主に伝統工芸品です。僕たちは輸入卸業務に始まって、売り場作り、代行営業までを手掛けました。商品は買い取りではなく委託販売です。
セントラルワールドの売り場だけにとどまらず、展示会や商談会にもモノショップを出展しました。出張販売のような形式です。
仮説通りには進まない
場所は一等地、売り場も広くて、伝統工芸品を中心に日本の良いモノを厳選して販売する。モノショップは最高の環境を得てスタートを切ることができました。
しかし、目標には遠く及びませんでした。当初、日本側も僕たちもこんな仮説を立てていました。
日本の良いモノはタイに販路がないだけで、販路さえ開拓すれば売れるはずだ。タイ人の手の届く範囲内に商品を置けば、多少とも売れていくに違いない。少なくとも、商品の改良など次につながるヒントは見つかるだろう。
しかし、仮説は仮説に終わりました。現実は僕たちの予想通りには進まなかったのです。
高すぎた価格、伝わらなかった価値
一つのプロジェクトが終了したからといって、仕事はそこで終わりではありません。プロジェクトを検証し、そこから次につながる「何か」を得なければ、やった意味がありません。失敗からの学びは次の事業への重要なステップです。
僕たちは考えました。仮説の何が違っていのか。何をすればよかったのか。どんな手をうつべきだったのか。
問題の1つは価格でした。商品として魅力的なモノはたくさんありましたが、いかんせんタイ人には価格が高すぎました。
メイドインジャパンだから高くて当然、日本から輸入しているから高価格でも当たり前、という言い訳は、お客様の前では通用しません。
「日本製?」
「いいね。でも高い」
価格をちらっと見て、はい、さようなら。価格を見るなり売り場から去っていく。それがほとんどのタイ人の反応でした。
モノを売るときの順番が日本とタイとでは異なることも、モノショップを通じて痛感しました。商品のこだわりから説明するのが日本流だとすれば、お得感を前面に打ち出すのがタイ流です。
タイ人は「BUY 1 GET 1」のようなプロモーションに目がありません。どんなに造りや素材にこだわりよりはお得感に目を惹かれる。それがタイの現実なのです。