MENU
kantatorn

2017.9.15

user-icon

僕が考える日本語通訳 前編

アクセス数: 1357

メディエーターでは事業の一端として、通訳の仕事も手がけています。

僕は、この通訳という仕事には強い思い入れがあります。在日タイ王国大使館勤務時代から長く通訳をつとめ、会社を設立する前もフリーランスの通訳として仕事をしてきました。長いキャリアがあるし、自信もあれば、誇りもあります。タイと日本をつなぐプラットフォームを追求しているメディエーターと通訳業務とは不可分の関係にあります。

今日は、この通訳という仕事について僕が思うところを率直にお話しましょう。本音ベースで通訳についての考えをお伝えしたいと思います。

通訳とは何か?

みなさんは通訳はどんな仕事だと定義されていますか?

辞書を引くと、通訳とは「異なる言語を話す人の間に立って、双方の言葉を翻訳してそれぞれの相手方に伝えること。また、その人」とあります(デジタル大辞泉より)。

この定義に従えば、タイ日通訳とは「日本語とタイ語を話す人の間に立って、双方の言葉を翻訳してそれぞれの相手方に伝えること。またその人」となります。

でも、僕が考える通訳、僕がメディエーターで心がけている通訳は、この定義とはちょっと異なります。正確に言えば、この定義を踏まえた上で、僕はさらに上の領域を目指しています。

それが何かをお話する前に、まず日本語の能力を示す指針となる日本語能力試験についてお話しましょう。

この日本語能力試験は、日本語を母語としない人の日本語能力を測定し認定する試験として、国際交流基金と日本国際教育協会(現日本国際教育支援協会)が1984年にスタートしました。試験は、言語知識(文字・語彙・文法)、読解、聴解の3つの要素から構成され、日本語能力は5段階(N1、N2、N3、N4、N5)のレベルに分けて認定されます。

もっとも下のレベルであるN5は、基本的な日本語をある程度理解できる能力が目安ですが、最難関のN1ともなれば、幅広い場面で使われる日本語を理解できる能力がなければなりません。

N1は日本語をスムーズに的確に使いこなせる

N1レベルに求められる「幅広い場面」というのは、日常会話に始まって、会議、商談、講義まで、それこそ日本語が使用されるありとあらゆる場面を意味しています。話すだけでなく、新聞の論説や評論まで理解できる読解力も欠かせません。

ただ日本語をペラペラと話せるだけじゃない。漢字を読むことも書くこともできて、文法的な間違いも少なく、かつ豊富なボキャブラリーも持っている。日本語をスムーズに的確に使いこなせる能力、それがN1なのです。

僕は日本語の勉強を始めてから8ヶ月でN1に合格しました(当時はN1ではなく、日本語能力試験1級と呼ばれていました)。

人生であれだけ一心不乱に何かに短期間に取り組んだことはありません。N1は僕の誇りであり、日本語を必死になって勉強してきた僕の情熱の証でもあります。なので、ちょっと自慢させてください(笑)。

でも、僕はN1を持っていることが日本語通訳のすべてだとは思っていません。合格して日本の大学に入学してわかったことは、N1はただ日本語で仕事をする、または生活をするための基礎を習得するための手段あり、決してゴールではないということです。

N1に合格することイコール日本語がペラペラに話せるということではありません。日本語が自由に扱える人はみなN1に合格しているというわけでもありません。言語はあくまでもツールです。特にメディエーターが心がけている通訳とは、N1の能力を持っているだけではない。それ以上の力を追求しています。

日本人の価値観や文化的・社会的背景の理解も欠かせない

十分な言語知識(文字・語彙・文法)や読解、聴解能力があれば、日本語通訳はつとまります。特に問題はないかもしれません。

でも考えてみてください。それだけでは本当に日本語を通して相手が伝えたい「思い」を形にすることが可能でしょうか?

僕はそうは思いません。さらなる力が必要です。

それは日本人の価値観を理解することです。例えば、日本人は非常に注意深いですよね。良くも悪くも、できるだけリスクを避けようと行動します。

プロセス重視も日本人には顕著な行動パターンだと思います。どれだけ具体的に成果をあげたかよりも、そのためにどれだけ「努力」をしてきたかを重視する。仕事の上で見られる日本人ならではのこうした傾向や価値観を理解することなく、通訳はつとまらないと思うのです。

日本の社会的・文化的な背景を頭に入れておくことも通訳には必須だと考えます。少子化、高齢化が進行している日本の現状、東京五輪後の未来など、日本が抱えている問題や社会的な使命、国際的な役割なども理解しておきたい。

別に専門家になる必要はありません。でも、日本人の思考や行動の基礎となる価値観や社会情勢についての勉強は欠かせないし、欠かしたくない。N1レベルの日本語能力はそうした理解の上に生きてくると思うのです。

mediatorのすべて」とは?

このブログは、「日本とタイをつなぐプラットフォームになりたい」その思いのもとmediatorを立ち上げた代表のガンタトーンが過去を振り返り、現在をどう過ごし、未来をどう形にしていくのか…今の気持ちを素直に表現したブログです。これまでの記事は、こちら(mediatorのすべて)よりご覧になれます。
ガンタトーン ワンナワス:在日経験通算15年。2004年埼玉大学工学部卒業後、在京タイ王国大使館工業部へ入館。タイ国の王室関係者や省庁関係者のアテンドや通訳を行い、タイ帰国後の2009年に MEDIATOR CO., LTD. を設立。日本貿易振興機構(JETRO)や福岡県などの日本政府機関、地方自治体の仕事を請け負う他、JETRO海外コーディネーターや中小企業基盤整備機構国際化支援アドバイザー等、日本の6つの組織でアドバイザーとして日本企業をサポートしている。日本語能力は、日本語能力検定(JLPT)にて最高レベルのN1保持者、ビジネス日本語検定(BJT/2016年)にて東南アジア最高得点を獲得。