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2016.2.5

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日本の美意識、教育制度をタイの美容サロンへ。すべてはサロンの増収増益のために。(ジップさん)「私と日本」vol.13

アクセス数: 3111

「日本のサロン教育制度をタイのサロンで普及させたい」
研学の人 ジップさん(株式会社ミルボンタイランド)

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「理念に共感したからこそ、この会社と歩んでいきたい」

一人のタイ人が今、株式会社ミルボンの理念(「すべてはサロンの増収増益のために」)に共鳴を受け、歩みをともにしている。タイ人の名前はジップさん。現在、彼女は株式会社ミルボンタイランドでタイ人美容師向けの営業の仕事を担当している。彼女はなぜ日本語を学び、ミルボンで働くようになったのか。それらを語る前に、まずは、ミルボンがどのような会社なのかを紹介しよう。

ミルボンは1960年の創業以来、業務用ヘア化粧品の総合メーカーとして展開。現在、日本国内ダントツのトップシェアを誇る。

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ミルボンの最大の特徴は自社研究所の存在にある。日本人の黒髪を科学的に分析し、DNAに刻まれた「しなやかな弾力」を取り戻すための技術を、日々切磋琢磨しながら革新し続けている。Wellaなどの欧米から輸入された美容文化を日本人の髪の特長に合わせて再構築してきた立役者、それがまさにミルボン。

初めて海外に進出したのは2004年3月のこと。進出先はアメリカ、ニューヨーク。次いで、韓国、台湾、香港、中国、そして、2012年5月にタイへと進出を果たす。2013年12月には、新たな生産拠点としてタイに工場が新設された。ジップさんは、タイの市場開拓に力を入れるミルボンの原動力として活躍している人物だ。

美容師の大変さを学ぶための研修、「すべてはサロンの増収増益のために」(ミルボンの基本理念)

「7ヶ月にも及ぶ日本での研修を終えてタイに帰国したのが3週間前。長いようで短い7ヶ月でした。ミルボンは美容師のためになる製品開発に特化しており、営業先はほとんどがサロンになります。美容のプロを相手にするにはそれ相応の知識と技術が必要であり、7ヶ月はその訓練期間なのです」

ジップさんは、シャンプー、カラーリング、パーマ、サロン体験入店まで、あらゆるトレーニングを受けた。全ては美容師の大変さを知るためだ。

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医師や国家公務員と同様に、美容師になるためには国家試験を通過しなくてはならない。研修期間中、ミルボンの社員にも模擬試験が行われるという。実際の国家試験を模した本番さながらの試験だ。

「試験は苦労しました。一つのウィッグ(カツラ)に20分で60本のカールを付ける技術、均一にカラーリングする技術。とはいえ、本当の美容師さんの大変さを考えたらまだまだ。サロン入店は美容師さんの人間力を知る貴重な体験になりました」

朝の9時に出勤して夜の9時まで店舗で接客をし、1時間に及ぶ会議の後に、明日の準備と自分のカット技術を磨く生活。一週間のサロン入店体験で忙しない美容師の生活を目の当たりにしたジップさんは驚きと美容師への敬意を込めて自身の体験を振り返る。

「こんなに忙しいのにつらそうな顔を一切お客様に見せない。むしろそれを楽しそうにやってのける美容師さんたちの姿を見ていて、『私も頑張らなくてはいけない』と思いました」

サロン営業に本当に必要なこと

サロン入店で刺激を受けたジップさん。美容師さんに商品の特長を教える立場になるため、次々と新しい知識と技術を身につけていく。しかし、美容スキルを身につけたジップさんを地方での飛び込み営業が待ち構えていた。

「私の担当営業先は長野県、一週間で50件のサロン回り。2~3人のチームで店舗のリストアップから始まり、計画的な営業プランを捻出しました」

門前払いを受けることもあれば、商品の説明までこぎつけることすら出来ないこともあった。しかし、三度目の正直とはまさにこのこと、三回目の訪問で商品に興味を示すサロンが現れる。

「まずは顔を覚えてもらうことから。『商品を売りにきました』という姿勢ではいけないと思い知らされましたね。足しげくサロンに通うことで初めて心を通わせることが出来る。心を通わせた状態で、製品の特長を説明して初めてモノが売れます」

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「モノを売るな、コンセプトを売れ」

これがミルボンの営業方針だ。急がば回れ、一見矛盾したように聞こえるかもしれないが、モノを売るためにモノを売ろうとしない。この姿勢を学んだジップさんはミルボンでの仕事に対する本音を語ってくれた。

「永遠に学び続けられる仕事。私は今の仕事をこう捉えています。7ヶ月にも及ぶ研修の間、インプットは全て日本語でした。しかし、私の仕事の拠点はタイです。アウトプットは全てタイ語でしなくてはならない。タイの美容師さんに商品の説明をするときは、言葉による説明を少なくしてわかりやすい写真説明を取り入れています。あとは理論よりも実践」

二つの言語を常に行き来しながらタイ人の美容師に製品の特長と美容技術を伝える仕事。タイには美容専門学校もなければ、美容師になるための国家資格すらない。日本とは異なり、毛髪、カラーを理論的に捉え、施術する基盤もない。だからこそ常に最善・最良を求めて ジップさんは答えを紡ぎ出さなければならない。

文字通り、仕事で日本語とタイ語を自由に操るジップさん。そもそも、ジップさんの日本語の能力はどのようにして身に付いたのだろうか。

日本語との出会いは必然に

「物心ついたころから日本語が自然と周りにありました」

タイ人の両親のもとに生まれたジップさん。母親が日本人の父親と再婚したのは10歳になるころだったという。

「毎年タイの夏休み(3~5月)になる度に、新潟の実家に遊びに行ったんです。父が喋る日本語は新鮮で、常に興味津々でした」

のんびり屋でマイペースな性格でありながらも、新しい言語に人一倍興味を示す少女。日本語だけでなく英語にも興味があり中学に入る前から自前の単語帳を作り、妹2人と遊ぶように言語を学んでいた。ジップさんが本格的に日本語を学び始めたのは中学2年生の春。

「ソーソートー(泰日経済振興協会)、ソーノーヨー(タイ国元日本留学生協会)、2つの日本語学校に毎週土日に通い始めました。ソーソートではローマ字の表記を使用した学習、ソーノーヨーでは最初からひらがなを使用した日本語学習をしていました」

国立ラチャビニットマタヨム高校でフランス語を専攻しながら毎週末に日本語の勉強に取り組む日々。タイの東大とも評されるチュラロンコーン大学の日本語学科に入学したときには、既にネイティブレベルの日本語の会話が可能だったそうだ。

「日本語学習で苦労したことがあるとすれば、やっぱり漢字。ひたすら書いて暗記しました。好きな漢字は侍。書きづらい漢字は努力。協力と書き間違えてしまうんですよ、両方、力が多過ぎて(笑)」

日本語上達の近道は「小説を読むこと」

大学三年で千葉大学に留学したジップさん。初めての日本留学をした1年の間、日本人の小説をたくさん読んだという。

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「私が千葉大学に留学していた当時、流行っていた小説が、金原ひとみの『蛇にピアス』、綿矢りさの『蹴りたい背中』、島本理生の『ナラタージュ』。自分と年齢が近いこともあって熱心に読ませてもらいました。『難しくても辞書を使いながら本を読む』。これが日本語上達の一番の近道だと思います」

大学卒業後、在タイ日本大使館の書記官秘書の仕事に就いたジップさんは就職後、2年半で再び海外に留学することを決心する。

「タイ政府との連絡係、政府の接待など普段経験できないことを経験し、普段なら会えない人と仕事ができました。ただ、25歳に近づいた辺りでふと思ったんです。『今留学しないと勉強に対する意欲が消えてしまうんじゃないかって』」

MBAを取るためにイギリスを留学先に考えていたが、TOEFLの試験が思うように捗らない。そんなジップさんに救いの手が差し伸べられる。

「文科省の試験で日本に行くための試験が英語だけだったんです。TOEFL向けの英語の勉強が功を奏し運良くパスしました。面接の結果、お茶の水女子大学に留学することが決まったのです」

図らずも日本に二度目の留学をすることになったジップさん。入学前の研究計画書ではタイと日本の「体にまつわる慣用句」を比較しようとしていたが、日本語とタイ語の外来語における受容性にテーマを変更したそうだ。

「日本語では『足を洗う』という慣用句がタイ語では『手を洗う』という表現になる。同じ仏教に端を発する慣用句なのに体の部位が違う。それでもどうして手じゃダメで足がいいのかがよくわかりませんでした(笑)」

変更したテーマは、日本から輸入されたタイ語の外来語、タイから輸入された外来語の使用頻度のデータを収集し、最も使用頻度の高いものに標準化するという統計学的研究である。

「例えば、タイの醤油、ナンプラー。ナムプラーという表記も存在します。どちらが多用されているかを調べ、使用頻度の高い方に表記を統一する調査をしていました」

日本とタイ、美容師の意識の違い

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2014年にお茶の水女子大学大学院を卒業したジップさんはタイに戻り、管理職向けのコーチングスタッフとして再就職する。

「答えを教えるティーチングと違ってコーチングは決して答えを教えません。答えに到るまでの過程を自分自身で考え、気付いていないことに気付いてもらう手伝いをするのがコーチングです」

そして2015年の3月、兼ねてから興味を持っていた美容に関わる仕事の誘いがジップさんのもとに舞い込んできた。

「ミルボンの日本人マネジャーの先生が私の知人で、紹介を通じて ミルボンに転職することになりました。ご縁に感謝です」

ミルボンの理念(「すべてはサロンの増収増益のために」)に共感し、その経営方針に成功するビジョンを直感したというジップさん。前職のコーチングの経験が商品の良さに気付いてもらうサロン営業の仕事にも生かされているという。しかし、今現在、タイ人美容師と日本人美容師の間には、技術だけでなく意識に雲泥の差があり、問題は山積みだ。

「日本のサロンはお客様が入店されたときの挨拶はもちろん、入店前から清潔さを保ち、細かい気遣いに満ちあふれています。まさに日本のおもてなしの象徴空間。タイの美容院ではお茶も出なければ、シャンプーで耳に水が入っても意に介さない人がいます」

他にも、髪の毛に対するダメージに対して日本人は敏感だが、タイ人は鈍感だという。日本のサロンではいかに髪の毛にダメージを与えることなくパーマやカラーをするかに細心の注意を払いながら施術が行われるが、タイでは髪に負担がかかるブリーチに対する躊躇も一切なくダメージを顧みることはほとんどないそうだ。

「美しさを拓く」(ミルボンのビジョン)

ジップさんは仕事における一つの目標を語ってくれた。

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「これから、仕事を通じて日本のサロン教育制度をタイで広めていきたいです。ひいてはタイの美容師さんの社会的地位を向上させていくことに貢献していきたいと考えています」

言わずもがな、ジップさんはプライベートでもミルボンの製品を使用している。もともと乾燥とごわごわした髪質が悩みだったジップさん。ミルボンのヘアケア製品を使用し始めてから、髪に潤いが増し、さらさらした髪質になったそうだ。実際、ミルボンの製品は年齢・髪質・地肌の変化・季節などに合わせて幅広い選択肢を用意している。
「自分自身の髪がキレイにならないと、説得力がないですから」

そう話すジップさんはもはや美髪伝道師の一員だ。二つの言語と思考を使いこなす頭脳明晰の彼女ならタイで新たな美しさを拓いてくれるに違いない。

株式会社ミルボンの情報

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「私と日本」とは?

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