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Blog 「SCawaii!」編集長を経て、日本とタイの美の在り方を追求するマルチタレント。(レイコさん)「私と日本」vol.11

2016年01月28日 (木)

私と日本
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「タイ人にも、それぞれのライフスタイルにあった美の在り方を伝えたい」才色兼備のマルチタレント レイコさん(ミャオさん)

小さな頃、タイの9チャンネルで土曜と日曜にだけ放送される日本のアニメに夢中になっていた少女、レイコさん。今彼女はブラウン管の中の世界にいる。

ファッション、ビューティー、ライフスタイルを発信する雑誌『SCawaii!』の編集長としてコラムを書き続ける傍ら、テレビ番組の司会を務め、タイの7チャンネルで放送された「BEAUTY VERSUS」ではタイで一世を風靡したフジテレビ所属のアナウンサー、榎並大二郎さんとともに総合司会も務めた。

「10代の頃はよくタイのラジオから聞こえるJポップに耳を傾けていました。今でいうJ-Channel。浜崎あゆみさんも安室奈美恵さんもよく聞きましたね」

懐かしそうに10代を振り返るレイコさん。そんな彼女に日本語を本格的に学び始めるきっかけが訪れたのは10代半ばを過ぎた高校2年の1学期であった。

日本語はフランス語よりもカンタン

「世界中の高校生を留学させるプロジェクト、AFSの試験に合格したことで日本留学が決まりました」

しかし、当時、日本語の勉強はほぼ皆無。日本語専攻のない高校への入学時点、レイコさんはフランス語を選択していたのだ。

「この選択は完全に失敗でしたね、毎回泣きながらテスト勉強してました。フランス語はタイ人から見ると不公平だと思いますよ。なんで名詞が女性と男性に分かれているの?オカマはどこにいっちゃったのって(笑)日本への親近感は子供の頃からあったし、当時は日本語を勉強しているタイ人も少ない。だからこそ、挑戦の意を込めて日本を留学先に選択しました」

留学するまでに日本語を勉強した時間はたったの30時間。交換留学先は新潟県新潟市。方言もあり、日本語の学習には手を焼くものと覚悟していたが、新潟県は地方のなまりが少なく標準語の学習もすんなり進められたそうだ。

「成田に到着したのは春先の3月。薄手のジャケットで降り立ったものだから、新潟で雪を目にした瞬間は凍えるかと思いました。それでも住めば都。フランス語よりも日本語の方が簡単ですしね。新潟は人も優しく、お米も美味しい。エビとカニにアレルギーがあるから海の幸はあまり食べられませんでしたけど…」

再びの日本、新潟からの上京

11ヶ月の交換留学を終えてタイに帰国したレイコさん。苦手意識を持っていた漢字もひたすら書き続けることで必死に暗記したという。そして、高校を卒業する時点で彼女は確信する。日本語が自分にとって最大の武器になることを。

卒業後、レイコさんはタマサート大学の日本語学科に入学。日本語をみっちり3年間学習した。そして、再び日本に留学する機会が大学4年のときに訪れる。

「留学先は早稲田大学。新潟から東京へ上京した感じですかね。たぶん、逆だったら上手くいかなかったんじゃないかな。毎日、真面目に勉強していました、夜遊びも全くしませんでしたし」

下宿先の高円寺から大学に通う日々。レイコさんは古着屋がところ狭しと軒を構える街並みや、鮮やかな黄色の銀杏並木を感慨深く懐古する。

「色々思い出しますね、タイ料理を寮の台所で友達に振る舞ったこと、自分の料理を食べて気持ち悪くなったことも(笑) でも、金曜の夜の満員電車はいまだにトラウマです」

東京留学で、他人への思いやりが強くなり、他人に迷惑をかけないようになったレイコさん。タイ人は優しいが、マイペンライを言い訳に他人に迷惑をかけることを正当化する傾向があるという。

異国の地での二度に渡る一人暮らし。自分に自信をつけたレイコさんに対してすかさず社会が門戸を開く。

「卒業のほんのひと月前、大学の先生から就職の話が転がり込んできました。 ここで断ったらチャンスはないという絶妙なタイミング。少し休暇も取りたかったのですが、迷う暇もなく就職しました」

雑誌と共に成長した4年間

就職先は雑誌『Cawaii!』(タイ版)の編集長アシスタント。当時のスタッフは記者、レイアウトのデザイナーも含めて10人以下だったという。レイコさんはコラムの執筆だけでなく、モデルの洋服を借りたり、スタイリングの手伝いをしたりと雑用まで全てをこなした。

「色んな内容のコラムを総合的に書けないとダメ」 当時の上司のコラムニストに関する主義だ。人手不足を補うようにファッションだけでなく、ビューティー、ライフスタイルと多岐に渡って記事を書き続けたレイコさん。真面目な仕事ぶりが評価され、働き始めて2年で副編集長、3年目で編集長のポジションに抜擢される。

「実は編集長になる前に、副編集長から仮編集長の時期がありました(笑)。社長が『まだ年齢が若すぎるから編集長になるのは時期尚早だ』と。『Cawaii!』が『SCawaii!』に名称を変更させたとき、名実ともに編集長という肩書きをいただきました。振り返ると雑誌とともに成長してきた感じですね」

しかし、出版不況のあおりを受けて、日本の女性誌は衰退期に突入。『SCawaii!』も『ViVi』も部数はいまやピーク時の約半分だ。『Ray』も、10万部近く販売部数を落としている。

悲しきかな、日本と同様タイでも出版不況の波が押し寄せているのが現実。タイの『SCawaii! 』は2015年8月、『ViVi』は2015年10月号で廃刊となった。つまり、雑誌『Ray』を残すばかり。

女性誌が次々に廃刊となる理由をレイコさんはこう語る。 「『本が売れない』という消極的な理由もありますが、廃刊には別の理由もありました。 タイでは日本ほど雑誌の棲み分け、差別化が確立されていなかったのです」

『ViVi』『Ray』『SCawaii!』のいずれも想定読者は20代。しかし、『ViVi』はハーフモデルを中心にしたインターナショナルなセレブ女性のイメージ、『Ray』は人気女優を中心にした誰もが憧れる女性のイメージ、最後の『SCawaii!』は個性的なシンガーなどを中心に自信に満ちた現代的な女性のイメージ。日本では三者三様のスタイルを確立させている。

「具体的には、『ViVi』ならモデルの水原希子さん、Rayなら女優の香里奈さん、 『SCawaii!』ならシンガーの加藤ミリヤさん。日本の雑誌はきちんと棲み分けができています。でもタイではその違いが曖昧なんです」

大人可愛いピンクの着方

日本のように雑誌のイメージが多様化していないタイ。「可愛い」という概念も日本とタイでは大きく異なる。その違いについてレイコさんはかつて読んだコラムを引き合いに説明してくれた。

「『大人可愛いピンクの着方』という特集を読んだときに『日本の女性はいくつになっても可愛くなれるなんて素敵だなあ』と感じたんです。 アイテム次第で何歳になってもピンクを着れる」

タイでは「可愛い」という価値基準は子供に向けられる言葉であり、幼い、子供っぽいというニュアンスに限定される。一方、日本では世代別に独自の「可愛さ」に辿り着く道がいくつも用意されているように感じるそうだ。

同時に、服装が年齢で制限されることにも異論を唱えるレイコさん。タイ人もTPO(時・場所・場合)に合わせながら、自分のスタイルに合ったファッションを取り入れるべきだと提案する。

ふと素朴な疑問が頭をよぎる、果たしてレイコさんに理想とする女性はいるのだろうか。

「私が理想とする女性は欧米人ではミランダ・カーさん、日本だとモデルのSHIHOさん。もともと私は『ViVi』のファンでしたから、自然と欧米やハーフのモデルさんに憧れるんです。その反面、最近は日本人が持つ自然な美しさに惹かれています」

美は一日にしてならず

7年間。日課としてコラーゲンを飲み続け、夏でも冬でも日焼け止めを全身に塗り、メイクは必ず毎晩落とし、毎朝体重計に乗り、毎日カレンダーに体重を記録するレイコさん。全ては自然な美しさを持続させるためだ。現代の美の在り方についてはこう考える。

「メイクや整形技術が発達した今の世の中、キレイになることはそこまで難しくないのかもしれません。でも、キレイでありつづけることはとても難しい。運動も食事も何もかも習慣化させなくては意味がない。自然な美しさは決して一日では手に入りません」

レイコさんはフィットネス、水泳、ヨガだけでなく来月からムエタイを始めるという。あくなき美への追求心。心技一体ならぬ心美一体。また、ライフスタイルを提案するブロガーとしてブログの更新も決して怠らない。

『SCawaii!』が廃刊になった影響で現在は編集長の職から離れてはいるものの、コラムは毎日書き続けているレイコさん。記事の投稿先は、日本人にもお馴染みのフリーペーパー「DACO」、タイ語新聞Post Todayの連載、ウェブ媒体の「Girldaily」だ。

百戦錬磨の編集の経験を生かしたコラム執筆だけでなく、「Kimochiii in Japan」(暴走族、コミケなど一風変わった視点から日本の情報をお届けするTV番組)の新シーズンの来日撮影も控えているという。そんな前途洋々な彼女がこれからの夢を口にしてくれた。

近くにある夢、遠くの夢

「近い夢は自伝の出版です。ブログという形でライフスタイルの発信をしながら、自分が今までに関わってきた日本の仕事経験を皆さんにお伝えしたい。 あとは、テレビ番組の出演を今以上に増やすこと。日本のモデル事務所と長い付き合いがあるので今後は日本で芸能活動をするかもしれません。遠くにある夢は、それらの経験を生かして日本とタイをつなぐビジネスを自身で経営することですね。 まずは、2016年を表舞台でも舞台裏でも色々と挑戦できる年にしたいです」

彼女を間近で見ていると、こんなフレーズが頭をよぎる。

「テレビで見るより実物の方がキレイ」

不意に芸能人に出会った際に放たれる反射的なお世辞か、はたまたテレビ番組内の枕詞だと思っていたが、まさかその言葉をタイで肯定する日が来るとは思いもしなかった。

レイコさんにはサントリーが生み出した青いバラ(ブルーローズ)がとてもよく似合う。花言葉は「夢かなう」。日本のテレビのブラウン管の中で、レイコさんを見かける日もそう遠くはないのかもしれない。

レイコさん(ミャオさん)のSNS情報

「「Kimochiii in Japan」では一風変わったテーマから日本の情報をタイの方々にお伝えしております。興味のある方はぜひご覧ください。また、雑誌での連載・コラム執筆の他にも、ライフスタイルに関する記事を掲載するブロガーとして活動しておりますのでフェイスブックを通じてご覧頂ければ幸いです」

レイコさんのフェイスブックページはこちら

instagram, twitter, youtube: @reiko_ws

レイコさんが出演する「Kimochiii in Japan」はこちら。

私と日本」とは?

日本語を話し、日本の価値観を身につけたタイ人から見た、日本の姿とは何か?2つの言葉で2つの国を駆け抜けるタイ人の人生に迫る、タイでのビジネスにヒントをくれるドキュメンタリーコンテンツ。
三田村 蕗子の画像
執筆 三田村 蕗子

ビジネス系の雑誌や書籍、Webメディアで活動中のフリーライター。タイをもう一つの拠点として、タイはじめとするASEANの日系企業や起業家への取材も手掛ける。新しい価値を創出するヒト、店、企業の取材が得意技。コロナ禍で絶たれたタイとの接点をどう復元するか模索中。

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