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2015.12.16

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タイ人スタッフの意識を変えたい!日系企業で働くタイ人が描く「日本のサラリーマンの生態」。(パタラポンさん)「私と日本」vol.7

アクセス数: 4135

タイ人の意識を変えていきたい!
  日本流ビジネスのエバンジェリスト、パタラポン・ルアブンチュー(ブーム)さん

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2015年5月。タイの書店にユニークな本が並んだ。タイトルは「ジャパン・サラリーマン」。ずばり、日本のサラリーマンの生態を紹介した本だ。日本人サラリーマンの名刺交換の方法を始めとする日本特有のビジネスマナーや仕事の進め方などをポジティブに描いたこの本は大いに売れた。いや、いまも売れ続けている。

日本のサラリーマンの生態をポジティブに紹介したベストセラー

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一般にタイで発売される書籍の初版は3000部。だが、「ジャパン・サラリーマン」は初版4000部でスタートを切り、すでに3回増刷された。タイ人社員を雇用している日系企業が「スタッフの意識を変えたい」とまとめ買いをしたケースも少なくない。

タイ人に、そして日系企業に多大な影響を与えたこの本の著者、ブームさんこと、パタラポン・ルアブンチューさんとはいったいどのような人物なのだろう。まずは、本を上梓した経緯について聞いてみた。

「『ジャパン・サラリーマン』は、日本の良いところを紹介したいと、僕が2014年の5月からFacebookで書き始めた内容がベースになっています。反応がとても良くて、60万人以上の方に見ていただけるようになりました。そうしたら、スタートから5ヶ月後に出版社の方から『本にしませんか?』と声をかけてもらったんです。2015年の1月から書き始めて、その4ヶ月後には本になりました」

そうにこやかに語るブームさん。彼がFacebookで取り上げた内容を少しだけ挙げてみよう。日本には102才のサラリーマンが存在すること、90才でシニアのワールドレコードを出し、金メダルを獲得した女性がいること、自分たちが整備した旅客機が離陸するとき、日本の整備士たちは必ずその飛行機に手を振り、見送っていること。大阪の空港では、乗客がピックアップしたときに持ちやすいよう、空港スタッフは荷物の取っ手を外側に向けてターンテーブルに置いていること。日本人でも知らないような楽しく、面白く、そして心がほんわりと温かくなるようなエピソードや事例をブームさんはFacebookで紹介。大反響を得た。

「日本の就職活動の実態やビジネスマナーについても紹介しました。僕は日本の某ケミカル企業に勤めているんですが、初のタイ人社員なんです。もちろん、タイ人としても初めての採用なので、回りはみな日本人ばかり。日本人や日本の流儀に合わせる必要があったからこそ、日本のビジネスのやり方が身についたんだと思います」


 「ジャパン・サラリーマン」というタイトルから、日本のサラリーマンの実態を揶揄した本だと思う人も多いかもしれない。

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だが、実態はその逆だ。ブームさんが描いているのは、少しばかり仕事中心で、効率的とは言えない面もあるけれど、基本的にはまじめに賢明に会社のために一生懸命働くサラリーマンの姿。ビジネスマナーを守り、手帳を使いこなし、成果をあげようと前向きに働く愛すべき人々だ。

自らの上司であり、同僚を踏まえながら、日本のサラリーマンの実態を優しく描き出した本の背骨となっているのは、日本に寄せる「愛情」といってもいいかもしれない。

葬式がきっかけとなって日本への留学を思い立つ

ブームさんの日本への「愛情」はどのようにして生まれ、育まれたのだろう。聞けば、日本の大学に留学するきっかけは、予期せぬところから飛び込んできたという。

「親戚の葬式に出掛けた母が、日本の大学を紹介するパンフレットを持ち帰ってきました。葬式に来ていた叔父がその大学のタイ事務所の担当者として働いていて、僕のことを聞いて、母にパンフレットを渡したんですね。2007年のことでした」

その大学とは、立命館アジア太平洋大学(APU)。日本人と留学生が半数ずつ在籍し、グローバル人材を育成することで定評がある大学だ。

すでにアサンプション大学の奨学金を得て、進学を決めていたブームさんの心は揺れた。まだ一度も海外には行ったことがない。これを機に海外に飛び出しチャレンジしてみるべきか。あるいは予定通り、タイの大学に進学するか。

ブームさんが選んだのは前者の選択肢だ。

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「何よりも視野を広げたいと思いました。両親も兄も応援してくれましたし、英語の試験や面接を受け、ポートフォリオを提出したら、トップランクの成績を得ることができたので、学費が免除になったのも大きかったですね」

大分県別府市にあるAPUに入学したのは2007年4月。50カ国以上から留学生が集まるインターナショナル色の強いキャンパスで、ブームさんは経営学を専攻した。授業はすべて英語ベース。だが、日本語の授業も1日に4~5時間とたっぷりある。ブームさんは勉強に明け暮れた。

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「同じクラスにはモンゴル人やベトナム人、韓国人もいたので、彼らとは日本語で会話をしていました。APUでは、1年次にはみな寮に入るんですが、必ず日本人がルームメイトになるんですよ。それも良かったですね。僕のルームメイトは寮長をつとめている4年生で、彼は英語はできなかった(笑)。だから、日本語で会話せざるを得なかったんです。でも、本当に面倒見が良い方で、ずいぶんとお世話になりました。初日は、電子辞書でタイピングしながら会話をしたことをいまでもよく覚えています」

彼女の存在が日本語学習のモチベーションを上げた

2年生になると、ブームさんはタイ人とルームシェアをして、別府市内でアパート暮らしをスタートした。だが、タイ語で苦もなく会話ができるタイ人と暮らしながらも、ブームさんの日本語学習意欲は衰えるどころか、ますます強くなっていく。

理由の一つは、日本人の「元カノ」の存在だ。

「元カノのおかげで日本語能力は一気に上がりました。彼女や彼氏を作るのは語学学習には本当に最適だと思います。自分の日本語の力がついてきたなと実感できるようになったのは3年生ぐらいからでしょうか」

ブームさんの日本語学習のモチベーションアップには、日本のTVも大活躍した。
「部屋にいる間はほぼTVはつけっぱなしでした。『ちびまる子ちゃん』も見たし、バラエティ番組も大好きでした。特にお気に入りだったのが『しゃべくり007』や『金スマ』。教科書だけの勉強だと、日常会話に使えないじゃないですか。その点、バラエティ番組で覚えた日本語は、すぐにふだんの会話に役立ちますからね」

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「キムタク主演の『グッドラック』とか、ドラマもずいぶんと見ました。あのドラマのおかげでパイロットの仕事の中身や航空会社の仕組みについても詳しくなった。学ぶことがたくさんありました。その点、タイのドラマは主人公の仕事がパイロットでも、仕事についてはほとんど触れられない。つまらないです(笑)」

ドラマやバラエティ番組に出てくる日本語は決して優しくはないはずだ。とりわけ、バラエティ番組には大阪弁など方言も多い。だが、ブームさんは熱心に視聴し、日本語能力の向上へと結びつけた。その努力には頭が下がる。

日本の本もずいぶんと読み込んだそうだ。

「僕はもともと読書は嫌いだったんですが、日本の本は別です。わかりやすいし、面白く解説してある本がたくさんありますからね。ダイエットや健康に関する本は楽しく読むことができました。あ、ロングブレスダイエットの本も好きでしたよ」

ロングブレスダイエットとは、俳優の美木良介さんによる「強く長い呼吸を繰り返すことでダイエット効果を得る」方法を紹介したベストセラーだ。こういった本に注目し、「面白い!」と感じるブームさんの感性が、「ジャパン・サラリーマン」の執筆につながったのだろう。

あえて日本企業に就職する道を選ぶ

立命館アジア太平洋大学公認の学生NGO団体であるPRENGOに入り、活動したことも、留学時代の忘れられない思い出だ。

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PRENGOはAPUではもっとも歴史があり、100人超の部員を誇る。活動目的は、タイ王国のラヨーン県で地域開発支援と教育支援。ブームさんは夏休みや冬休みを使ってはラヨーン県へと足を運び、小学校の支援活動に従事した。

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充実した4年間の大学生活が終わり、ブームさんは再び岐路に立った。APUで学ぶ外国人留学生は意外なほど、日本で就職する人は少ない。同期のタイ人35人中、日本の会社を就職先に選んだのはわずか5人だ。

原因は、日本の組織の「働きづらさ」にある。休みを取りづらい、残業が多い、ワークライフバランスが難しい。日本人にとっても決して楽とはいえない環境だ。外国人なら躊躇するのは当然だろう。

だが、ブームさんはあえて日本の会社を選んだ。

「せっかく日本語を学んだのだから、まずは日本の会社で働こうと考えました。APUは企業から人気が高く、300社以上の説明会が開催されていたんですよ。僕はそのうち30~40社にエントリーをして、無事、希望の会社から内定をもらいました。ただし、僕は親孝行のためにいずれはタイに戻りたかったので、3~4年でタイに戻れるという条件付きで就職先を決めました」

タイに支社がある某ケミカル系企業に就職し、タイへの出張を数多くこなしたブームさんに、早くも2年後、タイ勤務の辞令が下る。そして、日系企業のサラリーマンとして勤務しながら、作家としての活動も始まったわけだ。

複数のチャネルで日本の良いところを発信したい

いまのところ、二足のわらじ生活を終えるつもりはまったくない。処女作の「ジャパン・サラリーマン」が大好評を博したブームさんのもとには、当然ながら、次回作の執筆依頼も飛び込んでいる。

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「読んだ人が仕事でもっと成長できるように、日本のサラリーマンの手帳の使い方やPDCA(プラン・ドゥ・チェック・アクション)のほか、タイムマネジメントの手法を紹介する予定です。特に手帳に関するノウハウは日本独特で、本当に面白い。プロフェッショナルだと思いますね」

確かに、日本ほど手帳の使い方に熱を入れている国はないかもしれない。10月にもなると書店には手帳のコーナーが特設され、人生を変える、お金持ちになる、夢をかなえる等など、さまざまな新しいタイプの手帳が毎年登場している。ビジネス誌においても「手帳」は大人気の定番特集だ。そこにブームさんは着目し、タイにもこの「手帳文化」を根付かせたいと考えている。

「僕は、タイ全体の仕事のレベルをもっとアップさせたいんです。日本の手帳を紹介するのもその一つ。書籍だけではなく、TVなど複数のチャネルで日本の良いところをどんどん発信していきたいと思います。でも、会社は辞めませんよ。日中はちゃんと仕事をして、それ以外の時間で日本の情報をチェックして、紹介していくつもりです。これも、タイムマネジメントですから」

真剣な表情で「日本の良いところ」と言われると、日本人としては面映ゆくもある。と同時に、そうした言葉に恥じないように努めなければという気持ちにもなる。

そう、ブームさんの試みは、タイ人だけでなく、日本人の意識をも変える役割があるのだ。会社員と作家。二足のわらじを履いているからこその着眼点で「ジャパン・サラリーマン」を著したブームさんが、次にはどんな日本のビジネスカルチャーを紹介してくれるのか。日本人として襟を正して注目していきたい。

「私と日本」とは?

日本語を話し、日本の価値観を身につけたタイ人から見た、日本の姿とは何か?2つの言葉で2つの国を駆け抜けるタイ人の人生に迫る、タイでのビジネスにヒントをくれるドキュメンタリーコンテンツ。(関連記事はこちら)
三田村 蕗子(ライター):日本のビジネス誌、流通専門誌、ビジネス書を中心に活動するフリーライター。2014年11月、拠点をバンコクに移し日本とタイを行き来する。鋭い視点で、活気づくタイとASEANのビジネス事情を取材している。
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